インタビュー

「ご縁を繋いで、軽やかに自分を活かす」|株式会社すまいごこち 矢野万里絵さん

ASHIYA RESUME ロールモデルを見つけるインタビュー

新たな一歩を踏み出した女性たちに、事業を立ち上げたきっかけや継続する上での課題などをお聞きしました。
新型コロナウイルスの感染状況に伴い、遠隔(オンライン)で取材しています。

ご紹介

関西を中心に不動産物件のモデルルーム兼インテリアのセレクトショップ「すまいごこち研究室」を手掛ける矢野万里絵さん。不動産会社に10年間 勤務し、広報と賃貸管理業務のマネージャーをしていました。上のお子さんの妊娠と夫の転勤を機に会社を退職し、その後10年間 専業主婦として子育てに専念しました。女性起業家応援プロジェクト(LED関西)にエントリーし、セミファイナリストに選出されたことをきっかけに、本格的に起業を目指し、2018年に株式会社すまいごこちを設立しました。現在は、空き家の付加価値を高めるホームステージング事業の他にも、芦屋市商工会等のInstagram講師や、日経×woman・AERA with KADS の公式アンバサダーとしても幅広く活躍されています。

専業主婦から一転!悔しさをバネに起業を決意

 

会社を退職して専業主婦として過ごす傍らで、以前一緒に働いていた仲間たちがキャリアアップする姿を目にし、いつか自分も再び社会で活躍したいという思いをずっと持ち続けていました。転勤族の妻として定職に就くこともできず、5年前に芦屋に引っ越してきたときに下の子が小学生になったこともあり、何か始めるきっかけになるかもしれないと芦屋市商工会の創業塾に参加しました。

 

宅建士として働いたのち、専業主婦として住まいの主(あるじ)となる期間を経て、空き家を住み心地の良い家に再生させていきたいと考えるようになり、そのビジョンを神戸市仕事づくりセミナーで発表してみました。そこで最優秀賞と高く評価していただいたことで可能性を感じ、ビジネスプランコンテストLED関西へチャレンジすることにしました。

 

結果、セミファイナリストに選出されたのですが、惜しくもファイナリストには選ばれませんでした。その悔しさから実際に事業として形にしてみようと思い、起業を決意しました。

 

仕事と家庭の両立。妻として母として、私として

 

10年間ずっと専業主婦だったので、自分自身が社会復帰することや、仕事と家庭の両立の面で不安や葛藤がありました。家族の暮らしを下支えすることが、妻として母としての私の務めという毎日を送っていたので、自分ごとを優先することに臆病になっていました。ですので、起業家としては、驚くほどゆっくりした歩みで、仕事のこと、家庭のことを一歩ずつ確認しながら歩んでいます。起業当初は、仕事が思うようにできない焦りや罪悪感を常に抱えていましたが、最近は、「家族ファースト」が私らしい働き方だと思うようになりました。

 

私が起業したタイミングで、夫に東京転勤の辞令が出ました。それまでは全ての転勤に一家でついていきましたが、このときばかりは家族でじっくり話し合い、かけだしの私の事業を優先して、夫に単身赴任をしてもらう決断に至りました。

私は、これまで家族のためにキャリアを手放したと思っていたところがありました。家事を押し付けられているという意識が心のどこかにあり、不満を抱えがちでした。

 

でも、私の歩む道や目標を家族に認めてもらうことで、私も家族の日々の頑張りを尊敬するようになり、また夫には心から感謝するようになりました。家事を義務のように捉えていた専業主婦時代には思ってもみなかったことですが、仕事を外に持つことで、私は家のこと、家事が好きなのだと改めて気付きました。

 

丁寧な暮らしがベースにあってこその、私の仕事。家族が元気に出かけていき、安心して帰り寛ぐ場所、居心地よい住まい「すまいごこち」を足元から整えることが、私の使命です。

 

不動産業界に今までにない手法でアプローチ

 

前職でお世話になった家主さんに挨拶にいったときに、私が担当していた物件は古くなったので取り壊したとお聞きし、愕然としました。そんな時に私が出会ったのがホームステージングでした。

 

ホームステージングとは物件を空間演出して不動産価値を高める手法です。私がこれまで携わってきた中古の賃貸物件でも活用できるのではないかと思い、一般社団法人日本ホームステージング協会のホームステージャーの資格をすぐに取得しました。

 

物件が古くなってくると、家賃は下がり、一方で多額の費用をかけてリノベーションをしたり、不動産仲介業者に特別報酬を払って優先紹介をしてもらったりしなければ、成約しづらくなります。家主さんの負担を少なくして、暮らし方を提案することで物件の良さを引き出したいと考えました。

 

インテリアショップに声をかけ、実際に住むことができる部屋で、実際に購入できるインテリア商品を展示し、そこでのわくわくした暮らしをイメージしながら、気に入ったアイテムをそのまま購入できる、不動産物件のモデルルーム兼インテリアのセレクトショップ「すまいごこち研究室」をスタートしました。

 

第1号物件は、モデルルームオープン直前に成約済となり、気合を入れてセレクトしたインテリアをお披露目することなく撤収せざるを得ないというハプニングがありました。その家具などを、当時空室を抱えていた神戸市の築20年の物件に持ち込ませてもらったところ、モデルルームを公開してわずか10日間で4戸成約しました。さらにその物件のコーディネートが「ホームステージングコンテスト2019」でグランプリを受賞しました!

 

今年度は、1年以上空き家だった築40年の物件が、モデルルーム公開後、5営業日で成約し、コンテストでも準グランプリをいただきました。

 

ホームステージングコンテスト2020にて準グランプリを受賞した部屋
ホームステージングコンテスト2020にて準グランプリを受賞した部屋

発信することでなりたい自分に近づく

 

今までの経験から、家主さんの困りごとへの理解や解決には自信があります。不動産業界に新しい風を取り入れるため、空き家を活用するという発想で、業界外のパートナーシップをもっと広げるためにSNSの影響力を活用しようと考えました。

 

コロナ禍、頼れる身内がそばにいないワンオペで家庭を切り盛りしていることもあり外出を伴う営業活動を控えました。その間、Instagramでの発信に力を入れました。何を目的としたアカウントかを明確にし、その目的からぶれないように意識して投稿をしました。また、フォロワーの方とのコミュニケーションを大切にし、インスタライブやプレゼントキャンペーンなどを定期的に企画して発信しました。すると、100人だったフォロワーが6ヵ月で1万人になり、自分の声が多くの方に伝わるようになっていきました。

 

フォロワーが増え影響力が付いたことで、モデルルームを個展会場としたり、ワークショップを開催したり、コラボのお声掛けが以前よりしやすくなりました。インテリアショップだけでなく「aroma design ashiya」さんや「びっくりカーテン」さんなど、多業種の方々とのコラボレーションの輪が実現しました。

 

さらには、全国賃貸住宅新聞に連載コーナーを持つようになり、メディアからの取材も受けるようになりました。Instagram活用の面からもの講師として登壇させていただき、企業からInstagramの公式アンバサダーとしてもお声掛けをいただいています。

アイディアやビジョンを自ら発信することで、「こうなりたい」と思う姿に近づいていけるのだと実感しています。

これまでコラボさせていただいた女性起業家の方々
これまでコラボさせていただいた女性起業家の方々

目指すはデュアルライフ、働く場所もひとつじゃない

 

我が家は夫婦ともに関東出身で、関東には私がデザインして建てた自邸もあるのですが、2度の転勤で移り住んできた関西はとても暮らしやすいです。関西では、地元芦屋市での活動をこれからもっと広げていきたいです。将来的には関西と関東の両拠点で仕事をするのが夢です。テレワーク化が進み、場所にしばられない働き方の可能性が広がったと思います。

 

住まいや暮らしにまつわる仕事は、女性が活躍できる場だと思います。私達の世代は出産や家族の転勤などでキャリアを断つ人が少なくありませんでしたが、今の時代は多様な働き方の選択肢があります。主婦業というスキルにも価値はあります。「自分を活かしたい」そんな以前の私のような女性の一歩を応援できるようになりたいと思っています。

 

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ASHIYA RESUME ロールモデルを見つけるインタビュー

 

新たな一歩を踏み出した女性たちに、事業を立ち上げたきっかけや継続する上での課題などをお聞きしました。
新型コロナウイルスの感染状況に伴い、遠隔(オンライン)で取材しています。

写真提供:インタビュー対象の方

取材日時:2020年12月~2021年1月

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