インタビュー

子育ての助け合いという循環が、地域をつくる|芦屋市社会福祉協議会

ASHIYA RESUME 施設紹介インタビュー

芦屋を拠点に女性たちのやりたい働き方や暮らし方が実現できるよう、一緒に考え応援してくれる施設をご紹介するインタビュー。

今回は、社会福祉法人 芦屋市社会福祉協議会で、子どもの預かり事業を行っている芦屋市ファミリー・サポート・センターのアドバイザー柏原昌子さんと古村孝子さん、地域福祉係 主査の針山大輔さん、子どもを預かる協力会員の3名に、普段の活動内容や子どもを預かる上で大切にしていることについてお話しいただきました。

インタビュー実施日|2023年2月

芦屋市社会福祉協議会 古村孝子さん(左)、針山大輔さん(中央)、柏原昌子さん(右)

(ご紹介)

社会福祉協議会は、住民が主体となって、社会福祉の問題を解決するために活動を行う民間団体。社会福祉法に基づいて、全国の市区町村に設置されています。芦屋市社会福祉協議会が芦屋市から受託して運営する、芦屋市ファミリー・サポート・センター(以下、ファミサポ)は、育児の援助を受けたい方(以下、依頼会員)と育児の援助を行いたい方(以下、協力会員)が会員登録し、有償で子どもの預かりや送迎等の子育て支援を行う会員組織です。アドバイザーの柏原昌子さんと古村孝子さん、地域福祉係 主査の針山大輔さんは、依頼会員と協力会員の登録手続きやマッチングなどの運営全般を行っています。久村美穂子さん、國重那智子さん、新宮優子さんは、協力会員として依頼会員の子どもを預かっています。

困った時に預けることができる場所

柏原(アドバイザー):利用内容として一番多いのは、保育施設までの送迎で、1月は65回の利用がありました。その次に、保育(または学校)開始前や終了後の預かりです。急な残業時や早朝出勤の際に利用されます。習いごとまでの送迎や、出産前後のサポート、通院や体調不良のとき、仕事復帰までの準備期間や学校行事の際の下のお子さんのお預かり等もあります。また、リフレッシュのためのご利用も可能です。

預かりの場所は原則として協力会員のご家庭です。シッター料として、1回200円加算となりますが、産前・産後やご兄弟でのお預かり等の理由があれば、依頼会員の自宅で保育することもあります。子育て支援拠点(むくむく等)や、芦屋市社会福祉協議会が管理する部屋での預かりも可能です。また、ご希望があれば協力会員による食事の提供※も行っています。 ※別途食事料が必要、協力会員宅での預かりに限る

アドバイザーの柏原昌子さん

依頼会員として利用ができるのは、芦屋市在住・在勤の方。お預かりできるお子さまの年齢は、0歳~小学校6年生までです。なお、ご利用前には必ず会員登録が必要です。

登録後は、依頼会員と協力会員がお子さまを交えて、事前打合せを行います。
登録の際に依頼会員のニーズをお伺いして、地理条件や、ペットの有無、活動できる時間や曜日等、できるだけ近い条件で活動していただける協力会員をセンターでマッチングしていきます。

打合せ場所は、基本的に保育をする場所(協力会員の家)。依頼会員に場所などの安全確認をしていただくためです。緊急連絡先やお子さまの様子、保育の上で気をつけて欲しいこと等を記入いただいた用紙をもとに、活動に向けて話し合いをしていただきます。

原則として、依頼の受付はセンターで行うのですが、事前打合せが済めば、会員同士で直接連絡を取って、ご利用いただくこともできます。

安心して預ける、預かるために

柏原(アドバイザー):利用者はコロナ禍で減少しましたが、現在は、毎月約200~400件の利用があります。1月は293件でした。会員数は、1月末時点で、依頼会員879名、協力会員342名。依頼会員と協力会員を兼任する両方会員も53名います。

協力会員の登録のきっかけは、「自分が子育ての時に助けてもらったから、今度は自分が手助けしたい」といった理由や、「子育て経験を生かしたい」等。いろいろな想いで登録に来てくださいます。年齢は、20代~80代と幅広い世代の方にご登録いただいています。現在、活動していただいているのは、50代~70代の方が多いです。

協力会員になるには、協力会員養成講座を受けていただく必要があります。講習内容は、子どもの健康や発達、救命救急や栄養、遊び等について。全部で12時間、受講していただきます。

子育てに関する情報は、今と昔で違うことも多いので、新しい情報を知っていただくことで、預かる側も預ける側も安心できるのではないでしょうか。預け先が施設ではなく個人なので、お互いに不安があると思います。お互いに理解し、尊重しながら活動していただくためのサポートをさせていただいています。

芦屋市社会福祉協議会HPより

気軽に頼ることができる地域の先輩ママたち

久村(協力会員):預かる際には、事故が起きないように、安全面に気をつけています。責任を持ってお預かりしますが、”近所のおばちゃん”に預けるような感覚で預けていただければと思っています。

お家ではない場所で過ごすのは、子どもにとってとても緊張することだと思うので、まずはリラックスできるような環境を整えています。予め録画した子ども番組を見てもらったり、自分の子どものおもちゃを使ってもらったり。できるだけ、好きなことをして過ごしてもらいます。それが「楽しかったこと」にもつながるし、結果としてお母さんも安心されます。

ファミサポを通して顔見知りになると、預かったことのある子と近所で会うことも。最初に預かった子は中学生になっています。近所の子の成長を見ることができるのは嬉しいです。

家族でも保育所でも学校でもない、第三の場所で過ごすというのは、子どもにとっていい経験なのかなと思っています。一生懸命子育てしているお母さんを応援したいという気持ちで携わっています。

新宮(協力会員):私も気をつけているのはやはり安全面です。自分の子が大きくなったので、家の中も、今の家族の生活仕様になっています。ですので、お預かりするときは、その年齢のお子さんの目線で確認します。

引っ張ってしまうような紐はないか、口にいれるような小さなものはないか。土を食べてしまわないように、観葉植物を別の部屋に移動したり、サッシを開けられないようにしたり、細心の注意を払っています。

一番は安全ですが、一緒に楽しむことも大切だと思っています。テレビ番組を見ながら紙コップなどの材料を出してきて一緒に実験してみることも。家でどのように遊んだかをお母さんが聞いて、お礼のメールをいただくこともあり、嬉しく思います。日ごろから子どもを楽しませることができるようにアイデアを探すようになりました。

私はこの地域に長く住んでいます。子育て中の方が地域で生活や仕事をしていくためには、地域の情報が必要だと思っています。転勤で芦屋市に来て、利用される方も多いので、「地域のことは何でも聞いてね」とお母さんに言っています。

預ける人がいなくて、困っているお母さんを見ると、私がしてあげなきゃという気持ちになります。いざというときには、電話やメール1本でお願いできるので、子育て中の方の強い味方になっているのではないかと思っています。

協力会員の久村 美穂子さん(左)、國重 那智子さん(中央)、新宮 優子さん(右)

國重(協力会員):“くにしげばあば”と子どもたちに呼ばれています。65歳で定年退職し、その後の人生、子どもと関わりたくて、登録しました。定期的にお預かりしている子どもは数名で、週2回、月に2~3回、月に1回の預かりと頻度はばらばらですが、ほぼ毎日子どもが家にいます。年々、子どもを預かる件数が増えています。

預かる前には、必ず私の家に来ていただいて、家の生活状態をしっかり見てもらいます。私も、お父さん、お母さんに会うことで子育ての状況、食の好き嫌い、遊び方の状況等が理解でき、安心して活動に入ることができます。

私は夕方からお預かりするパターンが多く、夕食も提供しています。他人の家で、おばあちゃんに作ってもらって食べることは、子どもにとっていいことだと思っています。「これ美味しいよ、栄養があるよ」と言い続けていると、今では嫌いなものでも仕方なく食べています。そうすることにより、好き嫌いが少しずつ減っていきます。

子どもがお母さんに「國重さんの家のごはんが美味しい」と伝えたことで、何度かレシピを聞かれたことも。そこから家族ぐるみのお付き合いをしています。今では、安心して子どもさんを預けていただけます。

地域の力を借りる練習を

古村(アドバイザー):登録の際には依頼会員さんと1時間ほどお話をします。しんどそうに見えるお母さんほど、人に預けることをためらわれる傾向があるので、ひと押ししてあげたいなと常に思っています。

利用することで、自分の住む地域に知り合いや親戚のような人ができます。お母さんが「お願いします」と人に頼んでいる姿を子どもに見せるのも意味があることだと思うし、協力会員が自分の子どもについて、「こんなことができましたよ」と話をしてくれるのも、とてもいい体験になります。

アドバイザーの古村孝子さん

ですので、是非一度、地域の力を借りる練習だと思って頼ってみて欲しいです。用事がなくてもリフレッシュのためにも利用ができます。育児に行き詰まって、自分でどうにもならないところまで頑張らないで、人に頼る練習を、是非ファミサポでしてください。

針山(主査):依頼会員さんに話を聞くと、親族が遠く、いざというときに子どもを預かってもらうことができない、見てくれる人がいないという人が多いです。

ファミサポはベビーシッターとは異なり、ご近所の先輩ママに子どもを見てもらうという体験ができます。お母さんが自分の子育てを見直す機会にもなるので、有効に利用していただきたいです。

依頼会員は、何十年先でもいいので、将来は協力会員になって欲しいと思っています。人と人とのつながりが地域を育みます。温かい気持ちが循環していけば、嬉しいです。

主査の針山大輔さん

柏原(アドバイザー):ファミリー・サポート・センター事業は、就労や学習活動など、女性の社会参加の推進、子育て不安や悩みを持つ保護者への支援を行う事業です。地域の方が子どもを預かり、温かい関わりができることがファミサポの強みです。子育ての手助けをして欲しい人と、手助けをしたい人をセンターがおつなぎします。

子どもが好きで、子育てを手伝いたいと思っている方が地域にいることを知っていただきたいです。ただ子どもを預かるだけではなく、子育て中のお父さんお母さん、一人ひとりに寄り添えるような事業にしていきたいと思っています。

「子どもの笑顔、支えあい」を合言葉に、子どもはもちろん、子育てする人も子育てを手助けする人も笑顔でつながる地域づくりを目指します。

”子育ての助け合いという循環が、地域をつくるということ”
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