「苦手やコンプレックスの中にチャンスがある」|トラストコミュニケーションJUNO 代表 小野山純子さん
ASHIYA RESUME ロールモデルを見つけるインタビュー
新たな一歩を踏み出した女性たちに、事業を立ち上げたきっかけや継続する上での課題などをお聞きしました。 新型コロナウイルスの感染状況に伴い、遠隔(オンライン)で取材しています。
ご紹介
真っ直ぐに伸びた姿勢と豊かに変化する明るい表情が印象的な小野山純子さん。
画面を通していても聞き取りやすく心地のよいトーンの声は、さすが“話し方のプロ”です。
小野山さんは、企業の社員研修担当、3つの日本テレビ系列局アナウンサー、専門学校の非常勤講師、ブライダルスタイリストを経て独立。結婚を機に芦屋に拠点を移し、現在は芦屋市で子供から大人までを対象にした『芦屋話し方教室』を主宰、企業や団体向けの研修講師としても活動されています。
今回のインタビューでは、小野山さんがお仕事の貴重な経験談と起業のヒントになるお話を惜しみなく語ってくださいました。
苦手の中に自分の可能性を広げるヒントがある
もともとは人前で話すことが本当に苦手でした。
新卒で入った会社では、担当店400人の社員向けの研修担当になったんです。
でも、仕事なので何とかしないといけないと、おしゃべり教室へ通いました。
研修で次第に、「あなたの研修を受けてよかった」「あなたと同じ会社でよかった」とお褒めの言葉を多くいただけるようになり、話すことが苦手”という状態から“私が話すとみんなが喜んでくれる”と思えるようになったことは感動でした。
話し方教室では、小学生のレッスンもあります
「純子ちゃんはアナウンサーに向いているね」。
おしゃべり教室の先生の言葉を真に受けアナウンサーに応募したところ、奇跡的に採用されたのが26歳の時でした。
今ではアナウンサーが自分で原稿を書くこと、取材をすることは当たり前ですが、当時局によっては、原稿を読むだけでもよいアナウンサーがいた時代でした。でも入った現場では人手が足らず、取材や原稿書きを毎日自分でこなさなければなりませんでした。
嫌々ながらも取材と原稿書きに取り組んだことで、結果的に話す・聞く技術が向上して、原稿が書ける・取材が出来るアナウンサーとして評価されるようになりました。
この時も“苦手”に真正面から向き合った自分でよかったと思っています。
私にはこの道しかない
アナウンサーになって10年目、契約社員としての期間が終了し更新されなかったのを機に、新たな道へ進もうと36歳でアナウンサーをきっぱりと辞めました。
テレビ映りを改善しようと習得したカラー、ファッションの専門技術をさらにブラッシュアップするために、東京でヘアメイクの勉強もしながら専門学校の非常勤講師として働き、1年後、地元の大阪でブライダル関連会社の正社員になりました。
やりがいを感じていたものの、過酷な労働条件に疲弊してしまいました。毎日12時間近く働いて、自分の技術や知識を提供して、時給に換算すると驚くような金額で、正社員なのに経済的自立には難しいようなお給料でした。これなら自分でやった方がいいと独立を決意。心身ともに健康に働くためには自分でやるしかないと思い、39歳の誕生日に開業届を提出し、研修事業を行う『トータルビューティサポートJUNO」を立ち上げました。
独立開業に不安や心配事は一切ありませんでした。なぜなら私にはもうこの道しかなかったので「やるしかない!」という気持ちで突き進みました。
2015年44歳で結婚、芦屋に引っ越してきました。芦屋市民センターでレッスンを開始したのが2016年2月。
『芦屋話し方教室』の始まりでした。
芦屋話し方教室でのレッスン風景
何が必要かは経験してみないと分からない
唯一失敗だったかなと思うのは開業前に地元である高槻市でもなく、人脈もない場所で起業塾を受講したことです。起業について漠然とした思いしかない状態でノウハウを学びに行っても、習ったことに安心してしまい、どう活かせばいいのかさえわかりませんでした。
とにかくやってみる、始めてみる。そこで初めて自分がまだ知らないことが具体的に分かる。そこで分からないことや困ったことを学びに行くから、身に付くのだと思います。
準備して勉強してからじゃないと起業できないと思っていた私は、時間もお金ももったいないことをしてしまいました。
100点を目指していたら、いつまでも始められないですよね。
せめて自分の地元で受講していれば人脈が広がっていたのに、と悔やまれます。
これから開業する人や起業塾などで「学ぼう」と考えている方にアドバイスするなら、学ぶ場は、“地元か開業する場所で”、学ぶことは、まず自分自身で“自分に必要なことや困っていること”を具体的に絞ってからをおすすめします。とにかく走り出してから考えれば良いと思います。
起業や事業についてアドバイスをもらうなら、商工会等のしかるべきところを活用された方がいいと思います。またそういった場所での人脈作りも、大切な仕事の一つだと思います。
流暢な話し方ではなく“伝わる話し方”を教えたい
芦屋市商工会主催の子育てイベントでミニセミナーを開催しました
5歳から社会人までを対象にしている話し方教室には、色んな方が来られます。
来られる方は共通して“話し方に困っている”方たちです。
なので、教室では、ここでは失敗してもいいよ、安心して練習してねという思いから「安心できる場作り」を一番大切にしています。
聞いて欲しい相手がいるから、上手く話せるようになりたいという悩みが生まれる。
だから話し方を練習する前に、その相手が知りたがっていることを先に聞いて確認する。その後、相手が聞きたがっていることを話すのが大切です。教室では、“聞く”をテーマにしたレッスンもあります。
話し方が上手くなること=人の話が聞けるということ。人の話が聞けるからこそ、伝わる話し方が出来る。伝わる話し方には、流暢できれいな話し方は必要ないとレッスンで伝えています。すると、生徒さんから「話し方教室というより“人との関わり方教室”ですね」と言われたこともありました。これは本当にうれしかったです。
伝わる話し方が身に付けば、それはコミュニケーション力がよりパワーアップします。
コミュニケーション力がつくことで、人生は豊かになり、自己実現につながると心から信じています。
その後押しをするのが私の事業目標です。
まずは自分の身近な人を幸せにする
芦屋話し方教室では小さなお子さんにも話す楽しさを伝えています
人のためになる仕事を目指す上で、自分自身が人前で伝えていることを普段からできているのか、意識することも大切だと思います。
まずは、自分が楽しめているのか、家族のために生かすことができているのかを考えるのが大切だと思っています。身近な人を幸せにしたり、その人のために役に立てたりする延長に仕事があるよう、これからも活動を続けていきたいです。
一生続けていきたいと思える仕事に出会えたのは、苦手に向き合ったから。
苦手なことの中にチャンスがあって、可能性を広げるヒントがある。
自分の得意や好きで仕事が出来るのは幸せなことですが、困ったことや苦手だなと感じることにも意識を向けてみると、自分では思いもよらない道が開けるかもしれません。
今年50歳を迎え新たな挑戦
今年から日本語教師を始めます。
日本に外国の方が増え、教える対象者を日本人に限っている場合ではない時代が来ていると感じています。
そういう研修オファーも増えているので、外国の方にも気持ちよく日本で暮らし、働いてもらいたいと、まずは基本の言葉を教える日本語教師の資格を取りました。
新しいチャレンジは勇気がいりますが、これもやってみないと分からないですよね。
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ASHIYA RESUME ロールモデルを見つけるインタビュー
新たな一歩を踏み出した女性たちに、事業を立ち上げたきっかけや継続する上での課題などをお聞きしました。
新型コロナウイルスの感染状況に伴い、遠隔(オンライン)で取材しています。
写真提供:インタビュー対象の方
取材日時:2020年12月~2021年1月