「誰かに喜んでもらえることを仕事に」|チア講師 管理栄養士 松崎美奈子さん
ASHIYA RESUME ロールモデルインタビュー
芦屋を拠点に活躍するさまざまな起業家や女性たちの言葉をお届けしているロールモデルインタビュー。
今回は、日本人初のNFLセインツチアリーダーという経験を経て、管理栄養士・チア講師・ライターとしても活動されている松崎美奈子さんに、“大切な人からのご縁に全力で応える”というご自身の生き方にリンクした現在の働き方についてお聞きしました。
インタビュー実施日|2022年12月
ご紹介
大学卒業後、食品メーカーに勤務し、管理栄養士としてプロスポーツ選手やミス・ユニバース・ジャパンなどの栄養サポートを行ってきた松崎美奈子さん。
その後、アメリカに渡り日本人初のNFLニューオーリンズ・セインツ・チアリーダーとして2シーズン活動。帰国後フリーランスとなり、スポーツ紙のスポーツ栄養サイト「アスレシピ」コラム執筆・レシピ提供、スポーツ紙のチアコーナー「チアの木曜日」のメインライター、プロアマ問わずキッズから大人まで幅広い年代層に向けてチアを指導、管理栄養士としてアドバイザー・栄養サポートを務めるなど多岐にわたって活躍されています。
受賞:地域で活躍する女性をたたえる「ひょうご女性未来 縹(はなだ)賞」2019年
著書:「夢とともに輝こう ポンポン☆応援めし」2021年
求められるイメージと本来の自分とのギャップに戸惑う
2シーズンに渡るアメリカでのチアリーダー活動を終え帰国してみると、“NFLのチアリーダー”という経歴に対する予想外の反響がありました。
そのおかげもあり、フリーランスとして踏み出した私に、色々な方が声をかけて下さいました。一方で、チアリーダーと言えば、その衣装やパフォーマンスなどから華やかなイメージを持たれている場面が多く、チアリーダー=私という印象と、私自身の性格や個性との間にギャップを感じることもありました。
NFLニューオリンズ・セインツのチアリーダー時代の松崎さん
元々私は自分をアピールするよりサポートする側が向いていると思っていましたし、実際会社員として働いていた時は、プロスポーツチームなどの栄養面でのサポートをする仕事にやりがいを感じていました。しかし、お仕事として、チアリーダーとしての私のイメージを求められた場合は、チアリーダーである私も私自身が持つ一面でもありますので、その期待に応えて自分をアピールすることも大切にしてきました。
期待に応えたいという想いが挑戦への力に
チアリーダーといえば、チャレンジ精神に溢れ積極的な人物像を想像されることが多いと思います。
実際の私の経歴を見て、自ら道を切り拓き、チャレンジを経験してきた人間だという印象を持たれる場合も多いと思います。
決めるのはもちろん自分自身なのですが、きっかけを下さるのは、私の場合、いつも私のスキルを見出して、「美奈子ちゃんなら出来るよ!」と背中を押してくれる人たちなのです。
NFLのチアリーダーのオーディションへの挑戦も、「あなたなら出来る」と尊敬する方に励ましていただいたことから「期待に応えられるよう精一杯やってみます」という気持ちで挑みました。今の活動の主軸となっているチア教室も、「子ども向けに英語をとりいれてみたら?」という友人の勧めで始めたところ、「うちで開催してほしい」という声をいただいたことから会場が増えました。
また、念願だった「大人チア教室」のご要望をいただく機会にも恵まれました。
そこから、子どもや大人女性、シニア世代など、様々な対象で、食事と運動(チア)を組み合わせた「健康作りセミナー」のご依頼をいただけるようになりました。
ライターとしてコラムを担当させていただいたご縁で、レシピ本を出版させていただくこともできました。
私を認めて任せて下さる方に応えたいという気持ちが、私を奮い立たせ、勇気となって、これまでのチャレンジに全力で取り組んできました。
これまでのお仕事は、全て私にできることを引き出して下さった方がいて、その方々のおかげでお仕事させていただけたと思います。
今の私があるのは、チャンスを与えて下さる周りの方々のおかげなのです。
著書:「夢とともに輝こう ポンポン☆応援めし」(株)日刊スポーツ新聞社 アスレシピ編集部
やりたいことを見つけるよりも喜んでもらえることを選びたい
期待に応えられないかもしれない、人が集まらないかもしれない。
新しいチャレンジは、いつも本当に怖いです。
チャレンジを決めるのはもちろん自分なのですが、私にできることを見出して機会を与えて下さる方の期待に応えたいという想いが、モチベーションとなって本気で努力でき、その努力を楽しいと思う。このスタイルが、私には一番上手くいきやすいと気付きました。
積極的に選択して進んできた道ではないかもしれません。
かつて私自身が自分で考え企画した教室は、様々な人への周知に繋がらず、「このやり方では上手くいかないのだな」という学びになりました。
こういった失敗を通して、「できそうなこと」を自分一人で考え実行するのには限界があると実感したからこそ、私の「できる」ことを前提に未経験の分野の適性を相手が見出してくださって、挑戦する機会をいただけるのは、ありがたいことです。
さらに、そのチャレンジを喜んで下さる人と出会えるのは本当に幸せなこと。それこそが私の強みと言えるかもしれません。
働いていく上で気づいたのは、自分が情熱を持っていることの範囲の中であれば、自分のやりたいことより、必要として下さることに全力で応えるという働き方の選択肢もあるということです。
2022年神戸で開催されたMEETSPORTSのチアフェスティバルで審査員を務めました
自分らしくいることで自分に合う仕事と出会える
会社員の頃は、周りに人がいて助けてもらえる環境で、安定もあり、やりがいも感じて楽しく働いていると思っていました。
それでも当時の私は知らないうちに無理をしてストレスを感じていたのか、今の方が、身体も心もずっと健康だと感じます。
今のフリーランスという立場では、自分だけの力で仕事を生み出し収入を得なければなりません。
一人での活動は大変だと感じる時も多くあります。
会社員とフリーランス、両方経験できたことは、私の大きな財産になりました。
今は一番心地よく元気でいられるこの働き方に出会えて、本当に良かったと思っています。
けれど、時には無理をして仕事を引き受けて、身体や心がついていかなくなったこともありました。
「できること」と「できないこと」を行き来しながら自分自身を見つめ直してたどり着いたのは、いつも心地よく働ける心の状態が私には大事であるということです。
この自分にとっての幸せの基準を持ち続けていると、その価値観に合う人や仕事につながっていきます。
ですから、自分が大切にしていることを明確に持つことは、働いていく上で重要です。
私にとって大切なことに共感してくださる方々との縁を大事に、決して表面的ではなく、相手の気持ちも大切にし合える関係を築いていければと思います。
過去の私へのメッセージ「自分らしくいる勇気」
2年間アメリカで生活して、日本に帰国してみると、様々な違いに気付かされます。
日本は相手への配慮や気配りに重きを置いた文化が根付いており、それはすばらしい文化だと改めて感じました。しかしその一方で、特に女性にとっては、相手を思いやることが優先され、自分の気持ちや身体への負担へのケアが後回しになりがちだと実感します。
自分が心地よく働くためには、“自分に出来ること”以上に“出来ないこと”を知っておかなくてはなりません。
出来ることややりたいことに向き合って生きることが大切なように、出来ないことや自分の弱さ、苦手なことを認めるのも「自分らしさ」だと思います。
自分らしさを選択するのは勇気がいります。
時にただのわがままに映ってしまうこともあるかもしれないからです。
ただ、自分の気持ちや身体の状態を無視してまでも、相手のために努力をしてしまうと、無理をしてしまい、自分自身を大切に出来ずに苦しめてしまう結果になってしまいます。その結果、相手の期待にも応えられない、お互いにとってよい結果を生み出せないとこれまでの経験を通して学んできました。
今では自分の出来ることをきちんと提示した上でお仕事を引き受けるというスタンスを心がけています。
後になって、ミスマッチが生まれ相手に迷惑がかかる事態は避けたいからです。
出来ることも出来ないこともどちらも認めた上での自分らしさを大切にしながら、相手の立場や想いも大切にするコミュニケーションをとれるように工夫するように心がけています。
相手への敬意と愛情を持って、大切に言葉を選んで、きちんと伝える努力をすることが大切だと思います。
出来れば『No』とは言いたくないですし、『Yes』という方が楽です。
でも、取り繕わず、心を尽くして、勇気を持って本音で伝えることによって、新たな道が拓けたり、信頼や絆が深まることを学びました。
時に、うまくいかない事もあるからこそ、自分にぴったり合ったご縁に出会えたときは、感謝もひとしおです。
自分の「強み・弱み」を受け入れて、いつも自分らしくいられるように、大切な人との縁を大事にしながら、これからも心地よく働いていければ幸せだと思います。