インタビュー

「子どもたちが安心して学べる場所をつくりたい」|寺子屋EQBO主宰、任意団体パレット代表 瀬名香織さん

ASHIYA RESUME ロールモデルを見つけるインタビュー

芦屋を拠点に活動をする女性たちのさまざまな暮らし方や働き方についてお聞きするロールモデルインタビュー。

今回は、発達が気になる子どもと親のためのオンライン講座「寺子屋EQBO(エクボ)」の主宰で、子どもの居場所づくりを行う「任意団体パレット」代表の瀬名香織さんに、活動を行うことになったきっかけや、子どもの居場所づくりへの想い、今後実現していきたいことについてお話しいただきました。

(ご紹介)

子育ての実体験での悩みから親と子どものコミュニケーション方法に着目し、外部で専門的なトレーニング経験を積んだ後に独立。2019年に発達が気になる子どもと親に向けたカウンセリングや学習支援などのオンライン講座「寺子屋EQBO」を立ち上げた瀬名香織さん。2022年4月からは、前年11月に立ち上げた任意団体パレットで、発達障害や不登校、HSC(Highly Sensitive Child)やジェンダーなどに悩む子どもの居場所づくりを開始します。2022年3月27日(日)にはパレット初の体験型ファミリーイベント「でこぼこパーク」を芦屋公園にて実施予定です。

子育ての違和感を自分で解決するしかなかった

2歳までの子どもが対象となる小規模保育園に通っていた息子が、3歳になった時、次の保育園に入れなくて待機児童になりました。急遽、幼稚園に入ることになったのですが、保育中に教室から飛び出して園庭で遊んでいたり、参観日に見に行った際もじっとしていなかったり。周りの状況に合わせて行動することができませんでした。癇癪もひどく、夜もとにかく寝ないので、お迎えに行くと1人教室の隅で寝かされていることもありました。

小さな頃から育てにくい子だなと思っていたけれど、定期検診に行っても引っかかることはありませんでした。先生に聞いても「様子を見ましょう」と言われるのみでした。後に発達障害の診断が下るのですが、決定的だなと思ったのは、周りのお子さんが朝まで寝ると聞いたこと。そして、運動会で順番を待てなかったり、お友だちにちょっかいをかけて手を出してしまったりする様子を見たことでした。

なんとか解決策を見つけたいと思い、病院や療育先を探しました。療育を受けることになったのですが、カウンセリングは1カ月待ちで、初診が3カ月待ち、診察は6カ月待ち。子どもの半年〜1年はとても大きく、気が遠くなるような時間でした。夜な夜なネットで検索して、自分で何かできることがないかとたどり着いたのが、親の意識を変え、子どもに対して適切なコミュニケーションを行うトレーニングでした。とある協会でその術を学び、その後、もともと産業カウンセラーの資格を持っていたこともあり、私自身もトレーナーになりました。よりお母さんたちに寄り添ったサポートがしたいと思うようになり、独立して2019年に寺子屋EQBOを立ち上げました。

不安を抱えるお母さんたちに寄り添いたい

寺子屋EQBOでは、発達特性があるお子さんや不登校や行き渋りなど、少し難しい子育てをしている親に向け、オンラインで子どもとのコミュニケーション法をお伝えしています。カウンセラーとして知識を活かし、心理学や脳科学、発達科学も取り入れて、少しでも子育てが楽になるようなお子さんへの関わり方を親と一緒に練習します。

現在は月に10~15人程、個人相談を受けています。講座は2〜3カ月に1回開講して、毎回4〜5人の参加者がいらっしゃいます。講座終了後は、お茶会(フォローアップ勉強会)を2カ月に1度の頻度で開催しています。不定期に、どなたでも参加頂けるオンラインセミナーもあります。発達特性のあるお子さんを育てている親は、悩みを周りになかなか言えなくて、孤独を感じてしまう方が多いです。お茶会やオンラインセミナーが親たちの安心できる場所にもなればいいなと思っています。

 

寺子屋EQBOのオンライン講座の様子

 

仲間づくりは場所づくりへの第一歩

独身時代から居場所づくりをしたいという思いがあり、居場所づくりを見越してトレーナー活動を開始。思いを実現するために、2021年11月に任意団体パレットを立ち上げました。4月からは「ここちよい居場所づくり『ここぷれ』」を始めます。工作や公園遊びの他、学習支援やビジョントレーニングも行います。まずは月2回の頻度で、ニーズが増えてきたら週に1回は開催していきたいです。季節のイベントや神戸のクラブチームとのフットサルイベントも企画中です。1年後には拠点を構えて、毎日子どもたちが来られる場所にするのが目標です。

運営してくれるメンバーは6人います。子どもの療育先で一緒だったお母さんや知り合いの学校の先生、メルマガ読者をきっかけにつながった方など。京都にある子どもと若者の居場所「くらら庵」の運営を行うNPO法人Reframeの代表にはアドバイザーをして頂いています。Reframeは私も理事として講演会の調整や子ども食堂の運営サポートなどをさせてもらっています。

仲間同士でそれぞれが実施している活動を応援し合うことは大切だと思っています。仲間がたくさん集まれば、必要な人のところに声が届いて、さらに仲間が増えていくからです。SNSでの発信等は頑張っているつもりですが、「ずっと探していました。もっと宣伝してください」と言われることが多いので、必要とされている方に必要な情報を届ける方法を日々模索しています。パレットの活動も1人ではできないので、仲間を集めて全体を巻き込むことで少しずつ形にしていきたいと思っています。

 

時代に合った子育て方法、ノウハウを学ぶことが大切

子育ては親が子どもだった頃とガラリと変わっています。子どもの置かれている環境も異なります。時代に合った子育て方法を習わないと、親が持つ引き出しだけでは限界があるので、子育て法やノウハウを学ぶのはとても大切だと私は考えています。

寺子屋EQBOでの相談後に、「考えてから発言できるようになったので、すぐに怒らなくなった」、「子どもの気持ちの切り替えが早くなり癇癪が治まった」というお声を頂戴します。親側の物の見方や考え方が変わると、子どものことがよく理解できるようになります。親の気持ちが楽になると自然とかける言葉も変わってくるのです。「不登校の息子に対して、ありのままでいいよと言えるようになり、楽しく過ごせるようになった」と連絡をくださった方もいました。お子さんの反応が変わるのを見て、もう一方の親も声かけを真似るなどの良いサイクルが生まれ、夫婦仲が良くなる例もあります。

 

「子育て環境が変わった今、私たちが育ってきたように子どもを育てるのは難しい」と語る瀬名さん

過去の自分へ伝えたいメッセージ「その一歩は必ず未来につながっている!!」

過去の自分を振り返ると、やらない理由をたくさん作っていましたが、歳を重ねるごとに周りの反応が気にならなくなって、我流を貫けるようになりました。踏み出した一歩は必ず未来につながっているし、失敗したところで何も失うものはありません。今思えば、家族のために必死で会社に行って、辛いけど頑張ろうと思っていた時の方が、夫は協力的じゃありませんでした。自分がやりたいと思うことをしている今は、家族も応援してくれています。

今後やりたいことはたくさんあります。今の学校という枠組みや、仕組みが合わずに辛い思いを抱えている子どもが多いです。学校の中だけで問題を解決していくのは限界があるので、行政としての仕組みづくりが必要だと思います。例えば教室で学ぶことが辛く感じる子どもたちが遅刻や早退をする際に、民間の機関が入って学校に送迎できれば、親も助かると思います。行政ではサポートできない福祉と教育の境目を埋めていくのが理想ですが、学校と民間の連携にはなかなか難しいところがあるのが現状です。

最終的な目標は、パレットが元になった居場所がいずれは法人化して学校になっていくことです。今、子どもたちの居場所は増えていますが、学校法人として認められているわけではありません。自由な学び方を認めてもらえた証が学校法人として認可が下りることだと思っています。安心して学べて成長できる場所をそれぞれが選べるような社会になれば、不登校や発達障害という概念もなくなると思っています。あくまでも主役は学校ではなく子どもなので、子どもたちのためにできることを考えていきたいです。

 

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