インタビュー

お互いを知ることが、国籍の壁を越える第一歩「こくさいひろば芦屋」

ASHIYA RESUME 「場をつくる人」インタビュー

芦屋を拠点に、様々な人とつながりながら「場」をつくり、運営する女性たちのインタビュー。

今回は、こくさいひろば芦屋で、地域と連携しながら多文化共創によるまちづくりに取り組んでいる三宅真理子(みやけまりこ)さんに、普段の活動の様子や、日本人と外国人とが交流して学び合う場で心がけていることについて、お話しいただきました。

インタビュー実施日|2024年2月

(ご紹介)

こくさいひろば芦屋の代表を2018年から務める三宅真理子さん。芦屋浜に住む日本人と外国人が、お互いの文化を学び合うことによる多文化共創のまちづくりを目指しています。フランスのパリで自身が外国人として暮らした経験を生かし、対等に心を通わせていく独自の国際交流が評判です。こくさいひろば芦屋は、2021年には兵庫県より 「知事賞」(人間サイズのまちづくり賞)、 2022年には国土交通大臣から「第1回まちづくりアワード」(国土交通大臣表彰)を受賞。三宅真理子さんは、2024年2月に芦屋市教育委員に就任されています。

国籍を越えて、共に学び合う場に

毎週火曜日と日曜日に、芦屋市立浜風小学校の会議室とコミスクミーティング室にて活動しています。日曜日は 、大人、小学生、中学生、高校生を対象に、午前10 時から 12 時まで。火曜日は大人、中学生、高校生を対象に午後7 時から 8 時半まで活動しています。メンバーは全員で 70人ほどです。外国人が6割、日本人が4割です。

活動内容は、外国人と日本人がペアを組んで日本語を勉強したり、雑談をしたり、遊んだり。それぞれが希望する活動を自由に楽しんでいます。小学校だけではなく、地域の集会所や広場などを借りて、外国人が得意なことを生かしたイベントも不定期に開催しています。公益財団法人兵庫県国際交流協会(HIA:Hyogo International Association)から助成金を受けているので、日本語を勉強するためのテキスト代やイベント運営費、交通費などに充てています。

ここは、日本人も外国人もお互いに「学び合い」をしている場所なので、日本人をボランティアとは呼んでいません。理由は、ボランティアと呼んでしまうと、ボランティアが外国人に支援をしてあげるという関係ができてしまうからです。全員「メンバー」という呼び方で統一しています。鍵や窓の開け閉めや机のセッティングに至るまで、年齢、性別、国籍に関係なく、それぞれがその時にできることをしながら、活動しています。

異国の地での経験が「こくさいひろば芦屋」のベースに

こくさいひろば芦屋で活動する際の考え方のベースとなっているのは、2013年から1年間、夫の仕事の都合で移住したパリでの経験です。

パリに移住する前はテーブルコーディネーターをしていて、全国大会で受賞した年にフランスに行きましたが、フランスでは人とおしゃべりをして楽しむことが中心で、テーブルコーディネートや料理はあまり重視していませんでした。フランス人の生き方を見て、人と交流することや、その場の空気から生まれる幸せに気づかされました。それ以降、見せるためのテーブルコーディネートは止めてしまいました。

パリでのアソシエーション活動の様子

影響を受けたことがもう一つあります。夫の上司のフランス人で、日本文化を研究している方がアソシエーション活動※1をしていたことです。東日本大震災の後に、福島の子どもたちが故郷で遊べなくなったことから、子どもたちをフランスに呼んで楽しんでもらうという活動を行っていました。2013年から5年間、私も一緒に折り紙などのワークショップを開催して、資金を集め、福島の子どもをフランスへ招待しました。

※1特定の目的や共通の興味を持つ人々が集まり、協力して行う活動

2014年に帰国してからは、今度は自分が日本にいる外国人と積極的に交流したいと思うようになりました。街を歩いている外国人に話しかけて、自宅での食事に招待する機会を作りました。これまで200人くらい、お招きしています。

ヴィーガンの方には野菜を使っておすしを作ったり、ベランダでブルガリアの人のアペリティフ※2に2 時間以上一緒に楽しんだりしたこともあります。一度、畳の部屋にお布団を置きっぱなしにしていたので片付けようとしたら、『布団を見ることができて嬉しい』と言われたことがあり、日本人にとっての当たり前は外国人の当たり前ではないのだと感じました。より多くの外国人と交流したいという思いから、2016年よりこくさいひろば芦屋に参加しています。

※2 食前酒を楽しむ習慣

自宅に外国人を招いておもてなし

それぞれのアイデンティティを出せる場

パリでは、日本料理の講師をする機会がありました。当時、私はフランス語がほとんどできなかったのですが、日本についていろいろと質問された時に、嬉しくて伝えたいことがたくさん出てきたんですね。『フランス語が難しければ、事前にレシピを書いて用意しなくてもいいよ』と言われたのですが、辞書を見ながら、頑張ってレシピを書いてコミュニケーションを取りました。間違ってもいいから、伝えようと思ったのです。

この経験から、こくさいひろば芦屋での活動では一方的に日本語を教えることはありません。例えば、お正月について聞かれたら、まずは、『日本のお正月は~』という話をするのではなく、『あなたの国ではどんな風に過ごすのですか?』と聞きます。相手の話を聞いてから、『日本ではこうです』と説明しています。このように対話をすることを大切にしています。

「人に喜んでもらえたら嬉しい」と三宅さん

日本人が一方的に外国人に教えるのではなく、外国人が講師になって自国の文化についてレクチャーしたり、外国人が外国人の力になることもあります。毎週日曜日の、活動終わりには、中国の方が太極拳を教えてくれるんです。地域のバスケットやフットサルのチームの方々が一緒に太極拳に参加してくださることもありますよ。こうして地域の方々が参加してくださることがうれしいです。

こくさいひろば芦屋の日本人の方々も、外国人との交流を楽しんでいます。お勤めをしながら来られている方、国際交流をしたい学生、大学の研修で参加しているメンバーもいます。

日本では普通だと思っていることも、外国の人が日本に来ると、違和感を持つことがたくさんあると思うので、できるだけルールに縛られず、みんながアイデンティティを出せる場になればいいなと思っています。

国籍関係なく、地域で顔が見える関係に

多文化共創では、外国人と地域の人が、顔の見える関係になることが大切だと思っているので、外国人によるイベントを不定期で、無料開催しています。イベントを開催する時は、やみくもに自国のことを披露してもらうのではなく、メンバーが得意なことを披露してもらうようにしています。メンバーがどのような人かを知ってもらいたいので、『〇〇さんのイベント』というように、個人の名前を入れたイベント名にするようにしています。外国からの小学生や中学生も講師となって活躍します。

地域の集会所でモンゴルカフェをした時は、バターと牛乳を入れるバター茶を出しました。マダガスカルカフェを開いた時は、ヤマイモとココナッツを使ったお菓子作りを楽しみました。イスラエルの方による生け花教室や、スペインの中学生がフォークとナイフの使い方レッスンを開催したこともあります。フランスのペタンクというスポーツや夏祭りの出店(コロナ以降、一時休止中)も行いました。

この辺りは、お年寄りの方も多いので、ぜひ、交流の場として来ていただければ嬉しいです。海外旅行に行かなくても異文化の珍しい体験ができます。外国文化を披露する側も、観客が多ければ多いほど励みになってモチベーションも上がります。

 

マダガスカルカフェの様子

外国人の子どもたちには、ここで自分が講演やレクチャーをすることで、得意なことを通して自信を持って学校や地域で活躍するきっかけになればと思います。

大人は、日本人とオープンな関係が築けるようになってほしいです。いくら日本語ができるようになっても、日本人に対して気持ちの壁があると残念です。身ぶり手ぶり、片言の日本語であっても、伝えられるということが大事です。ここで日本人と触れ合うことによって、日本のことを好きになってもらいたいなと思っています。

日本人は、外国人は日本語が話せないというイメージを持たれている方も多いのですが、そうではありません。外国人=英語が必要というわけではなく、日本語で交流できることも知ってもらいたいです。日本人と外国人が地域で交流し、お互いを知ることによって、みんなの笑顔が増えたら、嬉しいです。

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