インタビュー

「覚悟と自信と想いで新ビジネスをスタート」 ディスプレイ事業etalagiste/ブランド「ユリ」  中島 彌生さん

ASHIYA RESUME ロールモデルを見つけるインタビュー

新たな一歩を踏み出した女性たちに、事業を立ち上げたきっかけや継続する上での課題などをお聞きしました。
新型コロナウイルスの感染状況に伴い、遠隔(オンライン)で取材しています。

etalagiste/ブランド「ユリ」  中島 彌生さん

ご紹介

フリーランスのデコレーターとして店舗やイベント等のディスプレイを中心に活躍する中島 彌生さん。専門学校住宅デザイン専科終了後、神戸大丸店宣伝装飾部に所属しました。その後、1980年Cartier Japanに入社し、36年間の在職中に直営店のウインドウ・店内、イベント、展覧会のディスプレイを担当し、全スタッフへのディスプレイトレーニングも担当されていたそうです。退職後、2017年に独立し「食料品からジュエリーまで」をモットーにフリーランスのデコレーター『etalagiste』として活動されています。2020年から宝塚市の老舗『百合珈琲』とのコラボブランド『ユリ』を立ち上げ、新たなビジネスへの挑戦をはじめました。

コロナ窮地からの新ビジネス立ち上げ

2020年の新型コロナウイルスの影響で2月から6月末まで、イベントやホテル関係のディスプレイの仕事がほとんどキャンセルになりました。そんな中で唯一、宝塚市の百合珈琲からは継続して仕事の依頼をいただいていました。

 

しかし、その百合珈琲も3月から休業せざるを得なくなってしまい「このままではお互い収入面で厳しい」と話していた時に、以前から積み上げられていたコーヒー豆の袋が目に留まりました。百合珈琲のオーナーに確認したところ、これらはほとんど廃棄されるものだと聞き「これをリメイクしてお宝に変えてみよう!」と思い立ち、手始めに自分でバッグを作ってみました。

 

仕上がったバッグを見た周囲の人から「これは製品化できるのでは」と言われたのをきっかけに、私と百合珈琲のオーナー、そして知り合いのアートディレクターの3人でブランド「ユリ」のプロジェクトを立ち上げました。

 

5月頃に思い立ってから準備をはじめ、9月2日にはECサイトをオープンしオンライン販売をスタートさせました。思っていた以上に評判が良く、販売から2日で2種類のバッグが完売し、ビジネスになると感じました。
今年3月には百合珈琲の2号店TOBERAのそばに、お客様に直接見ていただけるアンテナショップをオープン、実店舗での販売も今後計画しています。

INDONESIAの綿素材の珈琲豆袋で作った「ユリ」のバッグ。他にもエプロンなどのリメイク製品も展開
INDONESIAの綿素材の珈琲豆袋で作った「ユリ」のバッグ。他にもエプロンなどのリメイク製品も展開。

進むべき方向を議論できる仲間がいたからこそ前向きでいられた

メインのディスプレイ事業が、コロナの影響で仕事がゼロに近い状態だったので、そんな状況の中で新しいビジネスに重きを置いてしまって大丈夫なのか。そして、世間の状況的にも本当に利益を出せるビジネスにできるのだろうか。また、どれだけの人がこのビジネスに賛同してくださるのだろうか。などやはり不安は多くありました。

 

しかし、それ以上にプロジェクトメンバーとの「一緒にやるぞ、進めるぞ!」という思いが強かったです。前向きに考えられたのは、彼らの存在も大きかったです。言い合える良き仲間と、アドバイザーに恵まれました。

口に出して誰かに伝えることの大切さを実感

製品化にあたりブランドとしてお客様の元に届けるためには、素人ではなくプロの縫製でなければならないと思い、現在は縫製職での経験があるベテランの方と、芦屋の方に全てお願いして生産しています。
縫製会社は以前参加したオンラインセミナーでご一緒になった方から、紹介していただきました。どこでどんなご縁があるかわかりません。自分が挑戦していることや今後やっていきたいことを、口に出して誰かに伝えることが大切だと実感しました。

 

もうひとつの課題は、経営していくうえで絶対に必要な管理業務についてです。製品の在庫の調整や売上の管理など、規模が大きくなればなるほど負担も大きくなります。片手間にはできないことなので、今後は人を入れてのサポートも必要だと感じています。

 

希少になっている豆袋を捨てずに無駄なく再生することを第一に考え生まれた「ユリ」は、SGDs(持続可能な開発目標)を掲げています。材料面だけでなく、雇用の面でも取り組むべく、シルバー人材センターの方や、今後は出産後の社会復帰を目指す女性の支援も視野に入れています。

BRAZILの麻素材の珈琲豆袋で作った大き目のバッグ、350gと軽くリバーシブルでも使える
BRAZILの麻素材の珈琲豆袋で作った大き目のバッグ、350gと軽くリバーシブルでも使える。

新たなチャレンジ!LED関西への道

先日、女性起業家応援プロジェクトLED関西2021のセミファイナリストとして、「ユリ」のビジネスプランを発表しました。参加条件が起業7年以内とのことだったので「私でもいけるのでは?」と、8月の終わりのカンファレンスを聞いてエントリーを決意しました。

 

行動力と企画開発などは得意ですが、経営やリソースの情報が全く足りません。今後は大手コーヒーメーカーとの強いパイプを持ちたいと考えているのですが、まだまだ個人の力では難しいです。そこで、LED関西に出場することで何か新しい繋がりのきっかけになるかもしれないとの期待もありました。

 

残念ながらファイナリストには選ばれませんでしたが、セミファイナルで一緒になった他の参加者から、神戸でコーヒー豆に詳しい方がいらっしゃるとご紹介していただきました。こうしたご縁だけでも、私としてはLED関西に参加した意味はあったと思っています。

今後のビジネスプランと仕事に懸ける覚悟

最初はコーヒー豆袋再生ブランドとして「ユリ」を立ち上げましたが、様々な方からのアドバイスもあり、SDGs12「つくる責任つかう責任」の目標のもと、今後他にも破棄されてしまう端切れや間伐材なども、リサイクルではなくアイディア次第で価値を上げられるアップサイクル・ビジネスとして展開していきたいと考えています。

 

ビジネスは誰にでもできることではないと、私は思っています。何十年のキャリアや知識があっても、フリーランスになったばかりの時は仕事がなかなか無く本当に苦労しました。

 

Cartier時代は忙しくて休日が待ち遠しかったのですが、フリーランスになってからは「休みはいらない!もっと働きたい!」と思うようになりました。ぼんやりしているとあっという間に一日が過ぎてしまいますし、何もしていないと不安になります。立ち止まらずに、ずっと走り続けていたいです。

 

順調にビジネスが進み成功される方も多くいらっしゃるかと思いますが私の場合、覚悟と自信と想いがあって成功へのステップになると考えています。そして同じ方向を目指せる仲間が必要です。

 

 

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ASHIYA RESUME ロールモデルを見つけるインタビュー

 

新たな一歩を踏み出した女性たちに、事業を立ち上げたきっかけや継続する上での課題などをお聞きしました。
新型コロナウイルスの感染状況に伴い、遠隔(オンライン)で取材しています。

写真提供:インタビュー対象の方

取材日時:2020年12月~2021年1月

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