インタビュー

「自分自身が楽しめるかが基準 自然体で生きる覚悟を」│株式会社LiSA LiSA 貴田加野さん

芦屋を拠点に活動をする女性たちのさまざまな暮らし方や働き方についてお聞きするロールモデルインタビュー。

大人の女性のためのファッションブランド『LiSA LiSA』のオーナーであり、ASHIYA RESUMEでは推進メンバーを務められている株式会社LiSA LiSA社長の貴田加野(きだ かの)さんに、ファッションというお仕事への想いと20年以上の事業継続につながる芯の通った考え方をメインに、これから一歩踏み出したい女性に向けての応援メッセージを伺いました。

インタビュー実施日|2023年12月

(ご紹介)

生まれ育った芦屋で、自社製品のカタログ通信販売による大人の女性のためのファッションブランド『LiSA LiSA』を立ち上げた貴田さん。立ち上げから今に至るまで、自らモデルとなり発信を続けています。独自の感性から生み出される洗練されたファッションと、飾らない自然体なライフスタイルは多くの女性の心を掴み、全国各地でファンを増やし続けています。2020年には商品を実際に手に取って見ることが出来る初の実店舗を芦屋市松ノ内町にオープンしました。

大好きなファッションで女性を笑顔に

ファッションが大好きという家庭で生まれ育ち、神戸のアパレル会社で8年、イタリアンジュエリーの会社に3年と、結婚後もバリバリとファッション業界で働き続けてきました。娘の出産と阪神淡路大震災をきっかけに、子育てに専念しようと家庭に入り憧れていた専業主婦になりました。

娘は本当にかわいいし、成長を近くで見守れるのは幸せな時間でした。ただそれまでとは違う日常に、自分にはこの生活は合わないと感じることが増え、好きなファッションの仕事をまたやりたいとうずうずしてくる私がいました。

ディスプレイチェックは毎日の大切な仕事

当時の私は、40才代の10年が勝負で、50才代ではもう遅いと焦りがありました。
働き方を模索する中で、やはり私ができるのはファッションで人に喜んでもらうことだと思い至りました。

また働こうと決めたものの、娘との時間は大切にしたい。色々考えた結果、お勤めをするより自分で始めてみようという結論に達しました。始めるにあたり充分な資金があったわけでもありません。夫は働くことを応援してくれていたものの仕事が忙しく、サポートは期待できない状況だったため、時間と場所に縛られてしまう店舗ではなく自宅近くのワンルームマンションの一室で、サロンのようなスタイルで、できる規模から始めることにしました。仕事をしていても娘のことを忘れていないよという母心を込めて、ブランド名は娘の名前からつけました。娘は5歳、私は40歳のときでした。

ファッション&ライフスタイル誌VERY[ヴェリィ]に2001年に掲載 大きく取り上げられました

ファッションには魔法の力があります。身につけただけでテンションが上がって心ウキウキと楽しくなれます。『LiSA LiSA』のコンセプトである‟楽して綺麗”は、手を抜くという意味ではなく、心地よく着られて、なおかつきれいに見せてくれるという願いを込めています。
特に日本人は「褒める」ことも「褒められる」ことも苦手。何歳になっても褒められるのは嬉しいものです。「『LiSA LiSA』の服を着ていると周りの人から褒められて一日笑顔で過ごせました」といったお客様の声を聞くと、もっともっと笑顔を増やせるように頑張ろうという原動力になります。『LiSA LiSA』を通してたくさんの人を笑顔にできる、幸せなお仕事だと感じています。

 

大切なのは自分がワクワクするかどうか

私の世代は、ちょうど30代40代50代女性向けファッション雑誌が次々と創刊された世代です。読者層と同世代だったということと読者モデルをしていたご縁で、それらの雑誌に紹介された『LiSA LiSA』の商品を見て購入して下さるお客様が増え、自然と『LiSA LiSA』というブランドが全国に拡がっていき、カタログを作り、通信販売が始まったのです。

取材場所:阪急芦屋川近く パイクとそらにて

私の場合、新しいチャレンジをしてきたというよりは、流れが来たと感じたときやチャンスをいただいたときに、私自身がワクワクするかどうかを基準に決めるようにしています。
自分がワクワクしていないと、人をワクワクさせることはできません。

20年以上も事業をしていると次から次へと色々なことが起こります。ワクワクする選択を続けていくためには、周りの意見などに惑わされないぶれない軸を持つことが大切です。いざという時チャンスを掴むための選択や決断がすぐできるよう、その感性を常に研ぎ澄ませていたいと思っています。

 

日々ポジティブに過ごせるよう心がける

事業を長く続けていると毎日のように選択と決断にエネルギーを使います。自分の時間とエネルギーに限りがあるなら、落ち込んだり悩んだりして過ごすのは勿体ない。楽しいことやポジティブなことに時間を使いたい。落ち込む時間は最小限に、嫌なことはすぐ忘れることにしています。

終始笑顔を絶やさず、優しくも芯のある語り口で話される貴田さん

手が届き 目が行き届く「現場」を大切に

お客様と交流できて、実際に商品を手に取って見てもらえる場所があったらいいなとは考えていました。2020年にオープンした実店舗も、事務所の徒歩圏内にある今の場所に空きが出なければ、今でも店舗は持っていなかったと思います。人とのお付き合いも事業も同じで、自分の目が行き届いて、お客様の喜ぶ様子をリアルに感じられる距離感というのがベースにあります。私にとって「自分で責任を持てる距離感」は一番大事なのです。

 

嘘偽りのない自然体の発信が信頼感を育む

『LiSA LiSA』立ち上げ以来、必ず1日1投稿すると決めて始めたブログが、もうすぐ5555投稿になります(2023年12月時点)。『LiSA LiSA』の商品を始め、グルメや日常などライフスタイル全般を投稿しています。

発信をする上で心がけているのは、嘘はつかないこと。すごい文章でなくてもいい、自分の言葉で、ありのままを届けるようにしています。SNSが普及した現代では、嘘やその場しのぎの言葉は見抜かれてしまいます。見ている側には、全部伝わってしまうものです。

本心から伝えたいことだけを発信し続けることで、信頼につながっていくのだと思います。長く続けていくには、無理なく自然体でいる努力も必要かもしれません。

私が自らモデルとなって自社商品を発信し続けるのも、私自身が『LiSA LiSA』の服が大好きで、ワクワク感や着心地を自分の言葉で伝えたいからです。‟本当に好きなものだからみんなにも着てもらいたい”という想いが伝わればうれしいです。どんな時にでも『LiSA LiSA』のものを身につけると、辛いことが忘れられたり笑顔になれたりそんな存在になりたいと思っています。

貴田さん自らモデルを務める『LiSA LiSA』のカタログ

 

「始める覚悟」の次は「続ける覚悟」家族は一番の応援団

女性にとって、どんな働き方でも仕事と子育ての両立は決して簡単に出来るものではないのは、私自身の経験からも実感しています。

思っている以上に、子どもは親の言葉や姿勢に大きく影響を受けます。寂しい思いをさせているとか、仕事してごめんねという姿勢で接していたら、子どもは親の仕事を悪いものだと受け取ってしまうのではないでしょうか。「ママはお仕事頑張るからあなたも頑張ってね」と、親子が応援し合える関係を築けたら子どもは一番の応援団になってくれるはずです。

一歩を踏み出すには覚悟が必要ですが、始めた仕事を続ける覚悟も同時に必要です。仕事に責任を持ち、何があってもやり続けるという強い意志で臨んでいたら、子どもはその姿を必ず見ていてくれると思います。

子どもを優先すると決めていても、振り回してしまうこともあります。その当時は、私の娘も寂しい思いをしたことがあったかもしれません。
それでも何気ない会話の中で、一生懸命働いていたら子どもは親の背中を見てくれているんだな、応援してくれているんだなと感じたことがあり、すごくうれしかったのを覚えています。子どもが自立した今は、好きな仕事を思い切りできるようになり、充実した毎日を過ごしています。

東京でモデルとして活動する娘さんと。LiSALiSAではデザインとご自身のブランドishiを手掛けています

生まれ育った芦屋で恩返しを

芦屋で生まれ育ち、このエリアで商売をさせていただいてきたので、芦屋ならではのファッション文化を残していきたいという想いがあります。

自分や自社が社会にどんな形で関わって、何をお返しできるのかと考える世代になってきました。私自身、今までたくさんの人とのご縁でここまで続けられてきたことに心から感謝して、社会や次の世代に恩送りしていきたいと思うようになりました。女性がもっともっと活躍できるよう微力ながらも何かのお役に立てたらうれしいです。

 

これから一歩踏み出そうとしている女性への応援メッセージ「覚悟を決めて 自信を持って突き進もう 常にワクワクできる自分であること」

■LiSA LiSA(リサリサ)
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■貴田加野さん
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取材協力│芦屋あげパン パイクとそら

芦屋市東芦屋町5−8

▼公式Instagram
https://www.instagram.com/paikutosora/

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店主の川端輝彦さんと妻のかおりさん

一番人気のプレーン味(「あん揚げパン」)(右)は、あんでもちをくるみ、サクッと、フワッと、モチモチ!テイクアウトとイートインのどちらも利用できます。

 

阪急芦屋川駅から歩いてすぐ、築50年のレトロな集合住宅の一階をリノベートした、芦屋あげパン「パイクとそら」。

絵本から生まれたあげパン屋さんをコンセプトに、地域に寄り添い子どもから学生、お年寄りまで年齢世代をこえて愛されるあげパン専門店です。

「子どもの笑顔で地域を明るくしたい」と、寄付100円につき揚げパン1個を、毎月最終水曜に神戸市の母子生活支援施設に届ける「笑顔のあげパンプロジェクト」に取り組まれています。

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