インタビュー

「食を通じて人生を豊かに」  合同会社ミユキデリカ代表 池田美由起さん

ASHIYA RESUME ロールモデルを見つけるインタビュー

新たな一歩を踏み出した女性たちに、事業を立ち上げたきっかけや継続する上での課題などをお聞きしました。
新型コロナウイルスの感染状況に伴い、遠隔(オンライン)で取材しています。

ご紹介

大学卒業後、管理栄養士として病院に勤務し、その後、大手クッキングスタジオで講師を経験。出産後は自宅で友人を対象とした食育教室を開き、食育の大切さを伝える活動をしていた池田美由起さん。より幅広く食育を広めるため、2019年に合同会社ミユキデリカを設立。長崎の養豚農家に生まれ育った経験を生かし、実家の豚で作った完全無添加の食肉加工品販売とキッチンカー、料理教室やセミナーの開催を通して、食の大切さをより多くの人に伝える活動をされています。

食への知識が人生を豊かにする

管理栄養士として病院に勤めていたときに、多くの糖尿病患者さんと関わりました。

何度食事指導をしても退院して数カ月後には戻ってこられるのを見て、長年の食生活を変えるのは難しいと実感。

健康な時に健康を維持する食生活を伝えたいと、活動の場をクッキングスタジオに移しました。

講師の立場から、一般の方の食に対する意識の低さを知りました。

 

その後、出産して母親になり、食育を担っている一番大事な層は、子どもの味覚を作っている子育て層だと気づいたのですが、母親世代はクッキングスタジオに通う余裕がないということがわかったのです。

自分自身も子育てとクッキングスタジオの講師の両立が難しくなったということもあり、赤ちゃんや子ども連れでも参加が可能な料理教室を自宅で始めました。

  
今は飽食の時代で何でも食べることができますが、食に対する知識を豊かにして欲しいという思いがあります。

正しい食事が健康な身体を作り、健康であるからこそ仕事ができ、健全な思考や考えが生まれます。

健康の土台を作るには食への知識が必要不可欠だと考えています。

食育を広めたいという思いと、実家が養豚場なので豚を使って何かをしたいという気持ちがあって、起業することになりました。会社の理念は「食が豊かになれば人生が豊かになる」です。

 

現在は、料理教室と実家の養豚場の豚を使ったグラバーポーク※事業を行っています。

グラバーポーク事業は、完全無添加の食肉加工品(ハム・ソーセージ)の販売と移動飲食店であるキッチンカーです。

食育の大切さを伝えるとともに、完全無添加の自社商品を紹介することもできます。事業は最終的にはすべて食育につながっています。

 

※長崎県大村市日岳で農場の土やエサにこだわり愛情をかけて育てられたブランド豚「長崎グラバーポーク」

 

キッチンカーのミユキデリカ号。食育を伝える大切な交流の場所となっている。

食育は使命 失敗しても進み続ける

起業する前は不安でいっぱいでした。

もう少し勉強してから、もっと資格を取ってからと、できない理由ばかり並べていました。

先に起業されている方に相談すると、「どれだけ準備しても満足することはない。お客さまが求めているもの、自分に足りないものは始めてみないとわからないから、とにかくやってみては」と後押ししてもらえ、一歩踏み出すことができました。

 

最初の頃は大きな失敗もありました。

初めての起業で経営の知識や自信がないために、人の知識や人脈に目が行き、便乗すれば上手くいくだろうという甘い考えで進めていました。

相手には見透かされていて、かなりの損失を出したことも。

損失を埋めるためにパートや正社員で働くことも考えましたが、事業を辞めなかったのは、食育は長年やりたいと思い続けてきたことでもあるし、やらないといけない使命だと思っているからです。

 

失敗したときのことを振り返ると、自分の会社のことなのに、会社の方向性を他人任せにしていました。

経営者の一番の仕事は、信念を持って判断すること、判断したことに責任を持つことだと学びました。

その後は取引する上で、同じ価値観で共感できるか、その方の生き方を見るようになりました。

 

やりがいは「美味しい」のその先にあるお客さまの食卓につながったとき

キッチンカーでは、待ち時間の数分間で食のことや想いを話すように心がけています。

その後に、「美味しかった」という言葉をもらったとき、SNSで評価されたとき、「家族や大切な人にも本物を食べて欲しい」と商品を注文していただいたときなど、喜びはひとしおです。

 

ミユキデリカの食肉加工品。保存料、着色料、結着剤、増量剤、発色剤、化学調味料不使用の完全無添加。

 

また、買い物をするときに食品の成分表示ラベルを見るようになったり、食べる順番を気にするようになったりと、ミユキデリカと出会ったことで何か一つでも食の習慣が変わったという話を聞くと、さらに嬉しいです。

正しい知識が増えれば食卓が変わります。

食は代々受け継がれ、家族の健康と笑顔につながります。

そのきっかけを作れることが幸せであり、やりがいです。

コロナ禍では料理教室ができなくなったので、オンラインで料理教室と食のセミナーを開催しました。

必要な方に早く情報を届けることができたので、今後はオンラインも取り入れて、より多くの方に正しい知識を広めていきたいと思っています。

 

心にも時間にも余裕のある働き方をしていきたい

起業して丸2年、すべてが初めてで、がむしゃらに走ってきました。

創業期を乗り越え、嬉しいことにどんどん仕事が増えてきて、仕事の仕方や方向性、バランスを見直す時期に来ています。

外ではとても輝いていて仕事をバリバリこなす一方、家庭や食卓を疎かにしているのは理想の姿ではありません。

特に食育を主としているので、それでは何も伝わりません。

 

料理教室での味噌づくりの様子。料理を通して食に丁寧に向き合うことを伝えている。

 

生きることは食べることです。

丁寧に生きるということは、丁寧に食に向き合うということだと思います。

心と時間に余裕がないと、心を込めて料理をする、ゆっくり食卓を囲む時間はとれません。

裏を返せば、意識的に時間を作ることができれば、食を通して生活にゆとりを持てるのではないかと考えています。

まずは私自身が実践し、丁寧な生き方そのものが仕事になり、自分自身が理想のロールモデルでありたいと思っています。

 

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ASHIYA RESUME ロールモデルを見つけるインタビュー

 

新たな一歩を踏み出した女性たちに、事業を立ち上げたきっかけや継続する上での課題などをお聞きしました。
新型コロナウイルスの感染状況に伴い、遠隔(オンライン)で取材しています。

写真提供:インタビュー対象の方

取材日時:2020年12月~2021年1月

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